自転車。
若者らしくカラオケで夜を明かして朝帰りをした。
夜になるスピードと朝になるスピードは同等ではないだろう。
朝がどんどん僕を追いかけてきたから、僕は先輩から借りた自転車の変速を1番軽くして走った。
ペダルが僕の心みたいに空回りして、冷たい空気が鼻の奥まで突き刺さる。
家(寮)に着く頃には、夜は部屋の隅にまで追いやられていた。
先輩は夜の勤め(店おわってからの出張カットの指名で)を終えて
家へ急いで帰ってるのだろう。
そしてポストの中に隠された寮の鍵で鍵を開けて、家に入り、眠るころ。
たぶん、先輩は油臭いヘアカラーダイの除去液の匂いのままかえってくるけど、足を忍ばせて後輩の僕を気ずかってくれる。
僕も、明日は店が休みだから、もう少しカット技術をあげるためサロンへ通おう。